所感雑感の置き場

ゲームプランナーになりたい大学生が色々についての所感を書き散らす場所です。

「アイドル論の教科書」についての所感

自分の好きなコンテンツで卒論を書こう、とはオタクの大学生の多くが通る道なのではなかろうか。本書は、そうしたことを望む我々に多くの示唆を与えるものである。そもそも好きなものを論じるのは結構難しい。オタクの推しプレゼンなら関係ないことではあるが、「論じる」となればその難しさは跳ね上がる。好きという主観的視点から出発しているし、好きであればあるほどその視野は一部に狭窄化してしまっている可能性があるからだ。そうした主観的視点から離れて客観的にも納得感のある論を展開するのはかなり困難だ、と個人的に感じる。そして論じる以上、そこには確固とした論理性や論拠が求められるだろう。その論を展開するためのデータはどのようなデータからひっぱればいいのか?あるいは首尾よくデータを見つけたとしてそのデータが信用に足るものである証拠はないかもしれない。この部分を解決する方法を我々の多くは知らない。本書では、実際に論を展開することを通じて我々に「アイドル」のみならず、好きなものをアカデミックに論ずるための方法の一例を提示してくれている。内容としては、文系編と理系編の二編ごとに三つの論が展開されている。これは単純に読み物として面白いだけでなく、それぞれが違う側面から「アイドル論」を展開するため、ひとつだけでない、いくつもの論展開の方法を提示することにつながっている。

作者の一人、塚田氏は本書を大学生がアイドル(文化)を論じることができるようになるための「学習参考書」として執筆したと記している。そして本書で例題と模範解答を提示して、我々を「触発して、各論考の『応用編』を紡ぎ出してもらうこと」を目標にした、としている。本書はまったくその効果を十全に持つものだと私は、読了した瞬間に感じた。自分の好きなもの(私は今アンジュルムというアイドルにハマっているので特にそこについて)について論じてみたいと思わせられた。開明的な気持ちである。さてアンジュルムをどのように論じようか。